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■遊星キッチンとグループダイナミクス■




2007年9月、児童会館とタイアップして、子ども料理教室「遊星キッチン」(*1)を開催しました。
2006年から始めた「おいしい教室」は、5歳から小学校3年生までの子どもと保護者が対象ですが、「遊星キッチン」は小学校1年生から6年生までの子どもだけ。味覚教育は行わずに、料理だけです。

さてさて、両者の違いは? 教室からのレポートをお届けします。

9時30分開始。子ども14人とボランティアの人など総勢20人でスタートです。初っぱなから子どもたちの音量はマックスに。こちらの言うことを聞いてもらうのに苦労します。

きょうのメニューは、@おにぎり、A豆腐のみそ汁、Bハンバーグ、Cポテトサラダ。おいしい教室と同じく、メニューは平凡ですが作り方は本格的。きちんとダシをとったみそ汁、ハンバーグとマヨネーズも手作りです。実は、この中で意外に難しいのがおにぎり。塩味の加減と握り方で味が決まります。子どもたちはうまく作れるのでしょうか。

最初に包丁の使い方、野菜の切り方のデモンストレーションを見てもらってから、子どもたちが作り始めます。保護者と一緒の「おいしい教室」は、ある程度落ち着いて調理をしていましたが、こちらは子どもだけなので無政府状態。1グループに1人ついたボランティアの人たちも苦労しているようすです。

遊々は各グループをまわって調理の指導をしたり、時間を見ながらハンバーグやマヨネーズづくり、みそ汁の仕上げなどのデモを行います(*2)。

今回、子どもたちの興味を引いたのは、やはりマヨネーズづくり。卵黄に酢を加えて、少しずつサラダ油を入れながら混ぜて行きますが、みんな身を乗り出して見てくれました。
「最初に分離してしまうとうまくできないから、最初だけ大人にやってもらってね」と言っても、聞いてくれません。子どもたちだけで作ろうとして、あわてて遊々が手直ししたりしました。

豆腐のみそ汁を作るときに、手のひらの上で豆腐を切ってもらいました(*3)。「怖い!」と叫んでしまう小さな女の子もいましたが、なんとかみんな手も切らずにできました。

一番できなかったのは、やっぱりおにぎりかな。でも、デモのときに「おにぎりをおいしく作るもう一つのコツは、おいしくなれ、おいしくなれって思って握ることだよ」(*4)と話すと、一人の女の子が「愛情?」って言ってくれました。「そう、料理は愛情だよ」と日ごろのモットーを話すことができて、その子に感謝、感謝でした。

ちょっと時間オーバーでしたが、できあがった料理をみんなでおいしくいただき、成功裏に終わった「遊星キッチン」でした。

後日、遊星キッチンを振り返ってみると、子どもたちの行動に特徴がありました。それは、誰かが「僕がやる!」というと、「私が!」、「僕が!」と先を争って行動するということです。誰かが「レタス食べない」というと、他にも食べない子が出てきます。

そこで思い出したのが、昔興味を持って勉強した「グループダイナミックス」。日本語に直すと「集団力学」。私たちが所属している集団(職場、家庭、友達など)が個人に与える影響を理論立てしたものです。

例えば集団の中で起こる同調行動の実験に次のようなものがあります。

A図 B図
A図 B図

A図を見せて、次にB図の中から同じ長さの棒を選んでもらいます。答えは当然真ん中の棒。1人に答えさせるとまず間違うはずはありません。
ところが、被験者の前に8人のサクラがいて、それぞれ右側の棒と答えてもらうと、9番目の本当の被験者はびっくりして、当惑してしまい、全12回中6回サクラに引きずられて誤答した人は、全体の37%いたということです。

私たちは、日々集団の中で生活をしています。集団は個人の集まりにもかかわらず、集団自体が個人に影響を与えるというのがグループダイナミックス理論なのです。

遊星キッチンの「私がやる!」、「僕が!」、「私が!」は、明らかに同調行動です。グループダイナミックス理論を使って、もっと効果のある食育ができないか。夢想家遊々は、またしても灰色の脳細胞(*5)を回転させるのです。


*1 「星」の名前がついている地区なので、こういう事業名を考えてみました。事業の名前って、ユニークなものが好き。文章でもタイトルとか出だしの文で読む人を引きつけることを意識します。こういうことを「つかみ」とか「つかみでがんばる」と言っています。

*2 食育の講師をやるときは、コック服姿。そして「先生」と呼んでもらいます。コック服って強力な武器。これがあるから、こちらの言うことを聞いてくれます。ただし、後日普通の姿で子どもと会っても、なかなか「先生」と気づいてくれません。

*3 これは、小浜市のキッズキッチンをパクりました。

*4 おにぎりをおいしく作るコツは、@少しつけすぎると思うくらい、塩をつけること、Aご飯の芯まで握らないで、表面を固めるつもりで握る、B大きさは大小あっていいが、厚さは食べる人の口に合わせる。

*5 アガサ・クリスティの推理小説に登場する名探偵エルキュール・ポワロがこう呼ばれていました。



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