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■包丁物語3・切ることの科学■



アジの御造り
日本料理実技試験・アジの御造り
いま見ると下手っぴ


包丁はなぜ切れるのでしょうか。どうしたらもっと切れるのでしょうか。そもそも、なぜ切れなくてはいけないのでしょうか。

料理で食材を切るのは、いくつかの理由があります。@食べられない部分を取り除く、A料理に適した部分に分ける。B火の通りを均一にする、C形を整える、D食べやすくする、E食感を整える、F美観を整える、などです。

例えば、魚を造り(刺身)にする場合、
うろこを落とす、内臓をとる、頭を落とす→@
3枚におろす、皮をひく→@、A
刺身に切り分ける→C、D、E となります。


包丁が切れると、魚の細胞組織をスパッと断ち切ることができ、つぶれたり、汁がでるなどの損耗を最小限に抑えることができます。魚そのものの味を保つことができます。刺身の切り口は「角が立っていることが命」なのです。そのために、和包丁は片刃になっていて、その構造から刺身を切り分けるとき、残る側(右利きなら、上から見て左側)がきれいに切れます(*1)。

包丁がなぜ切れるかといいうと、その原理は2つあって、ひとつは「のこぎりの原理」、もうひとつは「かみそりの原理」です。

「のこぎりの原理」は、刃先の細かいギザギザを前後に引いて、それで切ります。この例が、包丁が切れなくなると、アルミホイルを切ると切れ味が戻るというあれです。確かに切れますが、食物の細胞も壊してしまいます。

「かみそりの原理」とは、これと反対に薄い刃でスパッと断ち切ること。刃先にデコボコがないように、研ぎます。でも、牛刀とか、菜切り包丁のような薄い包丁でもかみそりよりはずっと厚い。柳刃にいたってはもっと厚い。なのに、どうして滑らかに刺身がひけるのでしょうか。

それは刃の長さに秘密があります。食材に刃を垂直に押しあてて1cm切るのと、5cm手前に引いて切るのとでは、食材に入る刃の角度が5分の1になります。刃を移動することによって小さい角度を生み出しているのです。柳刃が長くできているのは、長い刃先を使ってワンストロークで切るため。決して前後に引いて切ってはいけません。のこぎりになってしまいます。

さて、このコンテンツの最初の「料理を始めたころ」のとき感じた疑問、「包丁は押して切るか、引いて切るか」の答え。

日本料理では、基本的に刃の前方を使って押し切りにします。大根の桂むきをけん(*2)にするときは、この切り方です。刺身は、刃先を一杯に使う関係から、峰に人差し指をあてて引き切りにします。

西洋料理も基本的には押し切りですが、光塩のNO先生は、「薄いものを切るときは押し切り。厚いものを切るときは引き切り」と教えていました。これは、押したときより、引いたときのほうが長くストロークをとれるからだと思います。実際、刺身を押して切るのは難しい。引き切りだと刃を長く使えます。最初は慣れませんが、キャベツの千切り(ジュリエンヌ)も引き切りのほうがふわっと切れます。

もちろん、これらは代表的な切り方で、押し切り、引き切りのほかにもさまざまな包丁使いがあります。

中国料理は、押すとか引くとかいうものではなく、もっと別次元の包丁使い。食材の横から切ったり、縦に切るときも刃先のアールを利用して切ります(*3)。


そんな訳で、答えは「押して切るか引いて切るかは、包丁と切るものによって違う。人によっても違う」でした。


*1 遊々の疑問:左側はきれいに切れますが、右側は押し付けられて細胞がひしゃげると思うのです。右側の切り口の立場はどうなるのでしょうか。誰か教えてください。

*2 一般に刺身の「つま」といわれるものには、2種類あります。「けん」は、「敷きづま」ともいわれ、刺身の下に敷くもの。大根や人参の千切りなど。「飾りづま」は、彩を添える花穂じそ、紅たでなど。

*3 文章ではうまく表現できません。中華包丁というと重い包丁を断ち切るように使うと思っていませんか。全然違うんですよ。



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