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■けっこう「寡黙な板さん」してます■



お店が開店してから、2カ半月が経過しました。最初はほとんどバタバタの状態。朝から仕入、仕込みと忙しく立ち働き、要領を得ないので、時間だけがひたすら過ぎるという感じでした。メニューも固まらず(*1)、試行錯誤の日々を過ごしていました。このころはサラリーマン時代の倍以上の時間働いていたと思います。

少し余裕が出てきたのは、1カ月を過ぎたころ。魚介と野菜の仕入を配達にして、あとは近場のスーパーにしました。これでかなり省力化に成功し、同時に仕込みの手際が早くなってきたので、時間が相当短縮できました。

メニューも日替わりではあるけれど、お造り、焼き物、煮物、中華、サイドメニューと骨格が固まってきて、レパートリーも増えてきました。骨格ができていると、仕入によってメニューを少し変えるだけでいいので、考えやすくなりました。

来店数は、日によって大波小波があり、満席で何組かお断りする日もあれば、極端に少ない日もあります。初めて来店ゼロ(*2)を経験したのもこの時期でした。

さてここからが本題。

以前のこのホームページの「店主プロフィール」の「夢」欄には、「将来お店を持って「寡黙な板さん」と呼ばれること」と書いていましたが、実際お店を持ってみてどうなっているのでしょうか。果たして「寡黙な板さん化」は成功しているのでしょうか。

実際に遊々と接した方はご存じだと思いますが、どちらかというとおしゃべりな人間です。人に興味があって、人と話すことが好きなのです。人前で話すことも何の苦痛も感じません。

そういえば、昔研修の仕事をしていたときに「1時間の講義をするには、その3倍から10倍勉強しなければならない」と言われていましたが、遊々の場合1時間勉強した内容で3時間くらい講義をしちゃったりします。

もう一つこれもその当時聞いた格言で、「人間の口は1つ、耳は2つ。これは自分が話す倍人の話を聞きなさいということ」というのがありました。遊々の場合は、人の話を聞かない(聞けない?)ほど話すことはありませんが、倍聞くというのは無理だと思っています。なので、まわりの人たちからは「板さんにはなれるかもしれないけど、寡黙は無理無理!」と言われていました。

ところが、実際には前の仕事をしていたときに比べると、けっこう口数が少なくなっているのです。

その理由の一つは、お店の構造にあります。

ここからがちょっとややこしい話なので、皆さん想像力を働かせてください。酒亭遊々の厨房はL字型をしています。L字の縦の棒にあたる所は、お客様からは見えません。縦の棒の上から順に、ビールサーバー、業務用冷凍冷蔵庫、洗い場、ガスレンジ、そして焼き台があります。ガスレンジでは、煮物、炒め物、中華などを作り、焼き台は魚を焼きます。これがバック・ヤード部分。

L字の縦の部分
L字の縦棒の部分
奧にはガスレンジと焼き台


これに対して、L字型の横の棒はカウンターになっていて、当然内部は客席から見えます。ここには、左からコールド・テーブル、舟形シンクと並んでいます。コールド・テーブルは、低い冷蔵庫で上が作業台になっています。舟形シンクは、流しの上に木製の足を置いて、その上に大きなまな板を載せてあります。ここは魚をさばいたり、お造りを引いたりする(*3)ところです。通常、遊々はコールド・テーブルの前が定位置となっています。

L字の横の部分
L字の横棒の部分
手前がコールド・テーブル
奧が舟形シンク


お客様が来店して料理のオーダーが入ると、まず考えるのはどの順番で料理を作っていくのかということ。すぐつまめるものやお造りから出していき、中間付近に軽いもの、肉料理やエビチリなどのメインの料理は後に出します。オーダーが入ってから、長い時間待たせることはできないので、時間のかからないものは先に、時間のかかるものは後に出すのが基本的な考え方です。

これが1組だけならいいのですが、2組、3組と重なると頭を使うことになります。1組目のお客様が来て、オーダーを受けて作り始めたときに、2組目、3組目と入ってきた時に、順番どおり1組目の料理を先に作ることはできません。そうやると、2組目、3組目の料理ははるか後に出ることになるからです。2組目、3組目の料理は、さっと出せるものを出し、あとはなるべく交互に作っていくことになります。油断をしていると「○○を頼んだんだけど、まだ来ないの?」と催促が来ます。

料理を作る順番も考えなくてはなりません。同じ料理を2つ作る方が、分けて作るより効率的だし、Aを作ってからBを作るより、Bを先に作る方が早くできたりします。

そんなことを素早く頭の中で計算しながら、頭の中で手順を組み立て、食材や食器を用意しているので、重複してオーダーが入っている時は、お客様と話す余裕はあまりないのが現状です。

そのうえ、2、3品を同時に作っている時は、コールド・テーブル前で下ごしらえをして、その間に何回も魚の焼き加減を見にいくなど、頻繁にカウンター内とバックヤードを行ったり来たりするので、長い話はできないことになります。

口数が少なくなるもう一つの理由は、お客様がママ(姉)の知り合いの場合。

お客様の大部分は遊々かママの知り合いです。いわゆるフリーのお客様は数えるほどしかいません(*4)。常連さんならともかく、ママの知り合いのお客様はママに接客を任せることが多いので、必然的に口数が少なくなる傾向にあります。

この間ママの知り合いから「マスターって、あんまりしゃべらない人なの?」って聞かれて、ドキッとしたことがありました。私の知り合いからすると、驚くべきことかもしれません。ママの知り合いであっても、何度も来てくれるお客様が増えると、こういうことも少なくなるでしょう。

そんなこんなで、ジョークのつもりで主張していたことだった「寡黙な板さん」化ですが、思いがけず成功しています。遊々としては、あまりしゃべりすぎない範囲で、対面カウンターの良さを生かしたお客様と楽しい会話ができたらいいと思っています。

最後にtakupocさん(*5)直伝のジョークを。
「マスター、きょうはやけに無口だね」
「へい火曜日(*6)ですから」


*1 もともと「定番メニューを置かない店」を目指してはいたのですが・・・。なかなかそうもいかず、現実には少しずつメニューが変わる程度で落ち着いています。

*2 いわゆる「お茶を引く」ってやつ。

*3 日本料理では、「刺身を切る」とは言わず、「造りを引く」と言います。

*4 もちろんフリーのお客様は大歓迎です。

*5 ホームページ開設当初からの読者。掲示板に書き込みをしていただいています。

*6 木曜日でもいいけど・・・。



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