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■おいしさの提案■



今回はお店で出すメニューのお話。

酒亭遊々が開店して、早や3カ月。作ったメニューは数多くありますが、作れるもの、作れないもの、売れるもの、売れないものの分類が感覚的にわかってきました。

■作れる料理、作れない料理
開店する半年くらい前にお店で出すメニューを考えようと思い、いままで作ってきた料理の中でお店で出せそうなメニューをリストアップしてみました。そうしたら、自分でもびっくり!! なんと125品あったのです。足りなかったら何か考えようと思っていたのですが、その数に納得してその後のメニュー開発をやめてしまいました。思えばこれが大きなミスでした・・・。もっと慎重に、料理時間や原価などをつきつめて考えておくべきでした。

開店直前は大混乱していたので、1日1日メニューを考えながらやってましたが、かなり早い段階(*1)でに自分が作れるものとお店で出せるものは違うことに気づいたのです。

まず調理時間の問題があります。居酒屋では、オーダーを受けてから比較的短時間に提供できるものでなければなりません。食材そのものから作るのであれば、調理時間がかからないもの。調理時間がかかるものでも、仕込みでほとんど調理が済んでいるものであればOKです。例えば、焼き物であれば焼くのに時間がかからないもの、煮物であれば、事前に煮込んであってさっと温めて出せるものが適しています。逆に調理に30分以上かかる料理は、居酒屋では無理です。

もう一つは原価の壁。店で主力となるメニューの単価は、400円から800円くらい。3、4人前の大皿料理でも1500円くらいが上限でしょう。店では、お酒や料理の原価(食材費)に家賃や光熱費など他の経費、それに利益をのせて売ることになりますから、売値の設定は重要になります。飲食店の場合、食材費×何倍という公式はありますが、一概にそれだけで売値を決定するというわけにはいきません。微調整を行って価格を決定しますが、売値はオーダーが出やすい価格帯にしなければなりません。いくらおいしい料理でも、居酒屋という業態からいって、数千円になってしまう料理はNGになります。

■売れる料理、売れない料理
作れる、作れないは割と早い段階で分かったのですが、かなり後になってわかったのは売れる料理と売れない料理の違い。売れる売れないには、もちろんお値打ち感、つまり価格の問題もあるのですが、そうではない要素もありました。

酒亭遊々のメニュー表は、日替わりになっています。ママ(姉)が試行錯誤しながら今の形になってきたのですが、同じようにメニュー表に載せてもあまりオーダーの入らない料理があります。

メニュー表
ママ苦心のメニュー表
ジャンル別に色分けしています


その傾向の一つは、字づらを見ただけではイメージが湧かない料理。マグロのイタリア風づけ、鯛の中華風刺身、ラタトゥイユ、板わさ(*3)などは出づらい料理です。イカの一夜干しとかアスパラベーコンなど料理名だけで出来上がりがイメージできる料理は注文が入りやすいのです。なので、料理としての正式名称は度外視して、プロシュート・グリッシーニ(*2)→ロングロング生ハムスティックというように、なるべくイメージが湧くような名前をつけるようにしています。逆に「びっくりポテトサラダ」のように、料理名で興味を引くということもやります。

料理の画像をつけていないメニュー表の場合は、料理名はとても大事です。

売れない理由のもう一つの傾向は、地味な料理の場合。名前を見ただけでどんなものだかわかるし、誰でも一度は口にしているはずなのに出ない。イカ大根、サバの味噌煮、豚の角煮(*3)など主に煮物に多いのも特徴の一つ。まったく売れないというわけではないのですが、オーダーが少ない傾向にあります。家庭でも食べられるからでしょうか。やはり料理としての華がないのかなと思ってしまいます。

板わさ
板わさ
酒のつまみとしてはいいと思うんだけど・・


■アジのなめろうに思う
酒亭遊々のオープン以来、ほとんどの日に仕入れているのがアジ。夏が旬の魚で、遊々は大好き。アジ料理の中でもイチオシは「なめろう」(*5)です。

札幌の人はアジを生で食べる食文化があまりなくて、アジと言って思い浮かべるのはアジフライか干物という人がほとんどだと思います。今でこそスーパーで生のアジを売っていますが、その昔は見かけなかったほどです。

「日本酒にはこれです」とか「札幌にアジの食文化を定着させるために頑張っています」と言いながら、お客様になめろうを勧めてみると一口食べて「おいしい!!」。こんな場面が毎晩のように見られ、「なめろう食べたい!」とオーダーを入れてくれるお客様が増えています。今ではお店の人気料理に昇格しました。

アジのなめろう
アジのなめろう
今では人気料理に


酒亭遊々は和食が中心ですが、中華もときにはフランス料理、イタリア料理も作ります。なめろうに限らず、遊々がおいしいと思った料理をぜひ食べてほしい。

私たち一人ひとりが感じる「おいしさ」には、地域の食文化やその人が育ってきた過程、そして経験が色濃く投影されています。食べなれた以外のものを口にするのは抵抗感がありますが、新たな食べ物と出会い、今まで体験したことのない「おいしさ」に出会う、「おいしさ」のキャパシティを広げていくことが、豊かな食生活につながると思うのです。

すすきのの片隅にある、小さな居酒屋「酒亭遊々」。お客様にいろいろな「おいしさ」の提案をしながら、お酒と料理を楽しんでいただけたらと思っています。


*1 プレオープンの中ごろに気づきました。

*2 細くて長い乾パンに生ハムを巻きつけた、イタリアのおつまみ。 

*3 蒲鉾を切って、刺身のようにして食べるもの。東京の蕎麦屋では定番の酒のアテ。札幌の人には名前だけでは姿がイメージできないようです。

*4 肉料理が少ないというママのリクエストに応じて作りました。けっこううまくできて、おいしかったのですが、まったく出なくてトホホ・・・。

*5 アジやイワシをたたいて薬味と味噌を混ぜ合わせる、房総の漁師料理。



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