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■仕込み酒その1・桂むき■



今回から始まる新シリーズ。「仕込み酒」といっても、日本酒を醸造するわけではありません。飲食店業界に「上(あが)り酒」という言葉があります。閉店後に自店や他の店で一杯やって帰る時がありますが、そのお酒のことを言います。「上り酒でもやるか~」という具合に使います。

遊々は、上り酒はあまりやりませんが、仕込みをしている時は毎日のように飲みながら作業をしています。それが遊々の造語、「仕込み酒」。

このシリーズでは、酒亭遊々の日常をつづっていきます(*1)。

*   *   *   *   *


厨房でダシを引きながら(*2)、野菜の仕込み。傍らには缶酎ハイ。

缶チューハイ
仕込み酒の缶酎ハイ


ぐいっと一口やって、冷蔵庫から大根を取り出します。これを桂むきにしながら、先月来たSさんとCちゃんを思い出しました。2人はともに、遊々が調理師学校に通っていた時のクラスメイト。学校を卒業してから8年も経つのに、開店案内を見て来てくれました。当時の2人はまだ10代。昼間短大に通いながら、夜は調理師学校に通うという、2重生活を送っていました。それが今では20代後半になって、落ち着いた大人の女性に成長していました。

「桂むきの試験、覚えてる?」
「大変だったー。大根何本買ったか分からないくらい練習したよね」
2人が話しています。

「そうそうあの時は大変だと思っていたけど、今毎日やっていると何でこんなことが難しいと思ったのか不思議なんだよね」と遊々。

調理科夜間部は、卒業まで1年半。その間に調理の実技試験は2回。日本調理、西洋料理、中国料理の3つずつあるので、計6回になります。

日本料理の1回目の実技試験は、大根を桂むきにして縦けん(*3)にすること。3科目の実技試験の中では最大の難関でした。日本料理の先生から授業で2回くらい教えてもらった後は、ひたすら練習するしかありません。休みの日に、大根を買ってきて格闘する日が続いていました。

桂むきは大根を8cmくらいに切って、やや厚めに皮をむいて、それから切れないように薄く薄くむいていきます。使う包丁は薄刃(*4)。左手で大根をつかみますが、親指を大根の真上にのせ、右手の親指を手前にのせます。目線は大根の向こう側、意識は右手親指に。この態勢で包丁を向こう側に進めて、大根を数ミリ切ります。包丁を戻すときは、切りません。切るのはあくまで包丁を進める時だけ。急ぐと厚みが均等にならないし、下手をすると途中で切れてしまいます。慣れないとすごく神経を使うし、疲れます。当時は、本当に苦労しました。

開店してから、仕込み時間にほぼ毎日この桂むきをしていたのですが、ある時考え変えてみました。桂むきだと思うから肩に力が入る。リンゴを6つくらいに割って、その皮を縦にむくときの包丁使いと同じじゃないか。そう思うと、あらら簡単にむけるようになりました。目からウロコの意識改革でした。

大根を桂むきにして
大根を桂むきにして
お造りサイズに丸めておきます


調理師学校での後期の実技試験はアジでした。アジを3枚のおろして、お造りに。釣りが趣味だった遊々は、割と魚に慣れていたけど、女の子たちは苦労していたみたいでした。

Cちゃん、
「夏休みに田舎に帰って、練習しようと思ったけど、田舎にアジがなかったんだよね」。
これも今となっては楽しい思い出の一つでしょうか。

そんな話をしながら、2人の近況を聞いていると、奥手だったCちゃんに年上の彼氏ができたとか。付き合いだしてまだ日が浅いらしい。

日本酒好きの彼氏と聞き、
「だったら、アジのなめろうを作ってみたら。酒の肴にぴったり。彼、泣いて喜ぶかも」。

ちょうど冷蔵庫にアジがあったので、作って見せながらレシピを説明しました。普段はこんなことはしないのですが、懐かしさも手伝って、特別にコーチしちゃいました。Cちゃん、作って彼氏にごちそうしてくれたかな。

*   *   *   *   *


「まいどさん」
月曜日の9時過ぎ、同じ階にあるスナックTのママがやって来ました。

T子ママは、つい最近開店25周年を迎えたこの道の大ベテラン。遊々とは毎日のように行き来していて、何かあるといつも相談に乗ってくれる頼りがいのあるママ。

「いやいやいや、暇だやなー」(*5)とT子ママ。
「月曜日はいつもこんな感じだよ」とこちらはうちのママ。

うちのママも、お客さんがいない時、Tに行って一杯やっています。店が終わってから2人で行って上がり酒をやることも・・・。

札幌の不夜城すすきの。夜はこうして更けていきます。


*1 フィクション混じりですので、そのつもりで読んでください。

*2 ダシを取ることをこう言います。

*3 繊維と直角に細く切って、お造りの大葉の下に敷く、敷きづまにします。

*4 野菜を切るときに使う和包丁。

*5 T子ママ、少し(というかかなり)浜言葉。



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