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■切れる? 切れない?■




今回は、手打ちそばのお話です。

初めてそばを打ったのは、実は田舎の実家でした。年末に帰省すると、大晦日に父がそばを打つというのです。父の知人にそば打ち名人がいて、その人から教えてもらったそうです。

面白そうなので一緒にやってみると、これがなかなかうまくいかない。太くて短いうどん風の食べ物ができ上がってしまいましたが、ゆでて食べてみるととってもおいしかったのを記憶しています。

光塩に入学した年の11月、新聞でカルチャーセンターのそば打ち講座の広告を見て、衝動的に申し込んでしまいました。これがそば打ちのスタートです。

そこで教えてもらったのは、二八そば。つまりそば粉8に対して小麦粉2で打つやり方でした。生徒1人に先生1人がついて、マンツーマンで指導してくれます。最初500gで打って、最終的には1kgを打ちました。

そば打ちの合間には、かえし(*1)の作り方やだしのとり方、そばのゆで方などを一通り学びました。

そのとき、そば打ち道具を一式購入したので、講座が終わってからも自宅で打っていました。大晦日にはたくさん打って、親しい人に配るということもしていました。

ただし、当時は光塩在学中だったので、本業の料理の方でしなくてはならないことが山積みで、そばは年に数回打つ程度。そば打ちは、純然たる技術です。回数を重ねなければ上達は望めません。「そば? 打てるけど、下手っぴだよ」という程度の腕でした。

お店の開店が決まり、手打ちそばもメニューに加えたいと思ってから、本格的に練習を開始。何回か打ってみたけれど、最後の包丁を入れるときに断面が正方形になりません。練習を重ねるうちにそれも克服し、店で出せるレベルに近づきました。

そしてここからが悩みの始まり。

プレオープン(*2)のときに、もりそばを出したのですが、ゆでる段階でブツブツ切れてしまい、そば飯のようになってしまいました。そばのゆで汁を変えずにゆで続けていたため、お湯が重くなって切れたと思っていたのですが、その後本格営業で作ったときも、切れることが多かったのです。

そば粉と小麦粉の比率を変えたり、打ち方を変えたりしても、切れるそばしか打てません。ある日、ふと思いついてそば粉を変えてみたら、これがなんとつながるじゃありませんか。そう、そば粉に原因があったのです。

教訓その1:「悪いそば粉はつながらない」


切れるもう一つの原因は、打ち方にありました。解決策は、コミック「そばもん」(*3)を読んで気づきました。

そばもん
コミックそばもん


その一つが水の量。そば打ち講座では、そば粉に対して水の量は50パーセントが基本と教えられました。もちろん粉の状態や温度・湿度によって変わりますが、基本の加水率は5割。そしてそばのゆで時間は40秒。

加水率5割は打ちやすいのですが、切れやすいそばができてしまいます。それよりも、加水率は4割程度に抑えて、そのかわり水回し(*4)を終えたそばをしっかりとこねるほうが切れないそばができ上がります。それまではさらっとこねていたのですが、300回以上こねるようにしました。これで大分問題が解決しました。ゆで時間は、1分10秒くらいでちょうどよくゆで上がります。

教訓その2:「加水率は40パーセントが基本。しっかりとこねる」


それからコンスタントに店で出していましたが、やはりゆでる時に切れるたり、逆にそば同士がくっついてしまうことがありました。時間がたつにつれてこの傾向は大きくなり、閉店を迎えるころには団子になってしまいます。

なぜ切れるのか、なぜ団子になるのか。そばを打つたびに考え込んでいました。切れずにゆで上がったそばを見るたびにほっとする日(*5)が続くのです。

この問題に本格的に取り組もうと、ネットでいろいろ調べているうちに、考え付いた答えが「打ち粉の量」と「保存方法」でした。

そばをのす時や切る時に、くっつかないように生地の間に打ち粉を振ります。こねた後に打ち粉をたっぷりふると、水回しのしていない粉が混ざってしまい、切れる原因となるので、打ち粉は最低限の量にしていました。のす時の打ち粉はこの考え方でいいのですが、切るときの打ち粉も同様に量を抑えていたのが失敗の原因でした。のしたそば生地をたたむ時に、間に打ち粉をはさみますが、その時はたっぷり振った方がいいのです。これは、切る時にそばをくっつかせないという意味もありますが、保管する段階でそば同士をくっつかせないために多くの量が必要だったのです。

教訓その3:「切る時の打ち粉はたっぷりと」


最後に保存方法。冷蔵庫で保存すると固くなるし、乾燥もして切れるのではないかと思って常温で保存していましたが、冷蔵庫で保管することにしました。その方法はこんな具合です。2食分くらい入る背の低いタッパーを用意して、下からラップ、紙製のペーパータオル、そば、ラップ、固絞りの不織布製のペーパータオルの順位に入れていきます。これで冷蔵庫保管。乾燥をできるだけ防いでおくと、切れないし、団子にもなりません。

教訓その4:「乾燥を防いで低温保管」

タッパーで保管
タッパーで保管



こうしてできたそばは、しっかりとつながってゆで上がります。打ってすぐゆでるそばでは、あまり気を使わなくてもいいのでしょうがが、仕込から営業まである程度の時間が経過する遊々のような場合は、幾多の工夫が必要になるのです。

今は週に1回くらいそばを出しています。まだまだ未熟なそばだと思います。お客様の「おっ、きょうそばあるの!」とか「おいしい」という声を聞くたびに、さらなる精進を誓うのです。


*1 濃い口醤油、みりん、砂糖で作ったそばつゆの素になるもの。これにだしを加えると、そばつゆになります。

*2 正式な開店の前に、知り合いに来ていただいて行う仮営業。

*3 山本おさむさんの作品。江戸そばの伝道師、矢代稜が全国各地を旅するお話。このコミックは、日々参考にさせていただいています。

*4 そばを打つ最初の作業。そば粉に水を加えて、全体にいき渡らせること。

*5 実際は、切れない方が多いのですが、ハラハラするのは精神衛生上よくありません。



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